自分でやってみると実は難しいミックスダウン。特にボーカルトラックのミックスは歌入り楽曲を制作するミュージシャンボーカルにとって、すべてのクオリティを決定づける生命線。「歌ってみた」を披露する歌い手さんの裏には優秀なMIX師のサポートが欠かせません。自力でプラグインのプリセットを使い倒すだけでもバックトラック(オケ)はカッコよくなっても、ボーカルだけはイメージ通りにできないと感じている歌い手は少なくありません。
✅もくじ
ボーカルトラックだけがイメージ通りにならない理由
オケはほとんどプロと遜色ない仕上がりでも、ボーカルだけがイメージ通りにならない主な理由は...。
①歌の録音(レコーディング)は究極の生楽器とも言え激ムズ
②マイク・プリアンプ等、アナログ機材差が大きすぎる
③レコーディング環境が違いすぎる
④エンジニアの引き出し&経験値に差がある
⑤オーディオレストレーション(音質補正)など考えたこともない
メジャーアーティストの楽曲は常に一線で活躍する著名エンジニアを起用。歌を「ナチュラル」に聞かせるための環境が完璧に揃っています。厳選されたヴィンテージ機材、最新プラグイン、老舗スタジオのルームアコースティックに至るまでを経験豊富なプロエンジニアが多彩な引き出しを元に処理。アマチュアが6畳部屋でDAW+安価なオーディオインターフェースを使用して録音したボーカルトラックとは殆どの場面で雲泥の差がでてしまう。
クラシックの声楽作品は後付け加工を基本行いませんが、ポピュラーミュージックの作品ではナチュラルに聞こえる作品でもほとんどの場合が何重にもわたる複雑なエフェクト処理が施されています。
アナログ部分のクオリティ差が顕著
ボーカルやアコースティック楽器の録音はアナログ機材のクオリティが重要です。プロは数十万円するコンデンサーマイクやマイクプリアンプを惜しみなく使用。エフェクトはプラグインでプロと同じものが使用できますが、高級機材を使用してのレコーディングはアマチュアにとってはとっても敷居が高いのが現実です。
最近はマイクプリはもちろん、そういった高級マイクもエミュレートするプラグインも存在します。
それでも録音元素材のクオリティが悪いとどうしようない
とはいえ、50万のマイクと5万のマイクではやはり差が出ます。そう言った細かなディティールの積み重ねが結果、大きな差を生みます。しかし、音作りはイメージに近づいても素材そのものが悪いとトータルのクオリティを上げることはできません。
特にボーカルトラックではコンプレッサーが重要。プロの素材には入っていない細かなノイズが存在するとそれが増長され「何となく違和感のある音」になりがち。
特に宅録ではオーディオ・レストレーションによってボーカル録音のネガティブな要素を緻密に排除しないとプロクオリティに寄せることは困難。何気なく録音したボーカル素材には、クリップノイズ、リップノイズ、服などが擦れる物音、吹かれ、など、クオリティを低下させる要素が沢山あります。
アマチュアクリエイターで非常に多いのがボーカルトラックのコンデンサーマイク録音問題。オーディオ波形上ではしっかりヘッドルームに余裕があるのに音割れに近い現象が発生するケースも。
細かな処理が必要なボーカルトラック処理事例
海外ミックスコンテストにて配布されたボーカル素材を当メインエンジニアがクリーニングした事例です。リップノイズはもちろん、マイク吹かれやレコーディング時に拾った細かな雑音を丁寧に取り除いています。簡易的なローカット処理では得られないクリアなサウンド。その後のミックスクオリティに大きくアドバンテージが得られます。
微差の積み重ねこそ大差となる音楽作品のクオリティ
録音環境に恵まれないアマチュアがプロクラスのボーカルトラッククオリティを求めるならオーディオレストレーション作業は必須です。RXは慣れるまで難しいですが、ボーカルを含む生音を主軸に音楽制作される方は導入して使用法をマスターしましょう。
YouTube等のミックスTipsでは各プラグインや細かな情報が無数にアップロードされていますが、やはり殆どの動画コンテンツは断片的なスキルと言わざるを得ません。レコーディング(録り音)、オーディオレストレーション(ノイズ除去)、ミックス(プラグインのセレクト、効果的な活用法)、マスタリング。これらの一つ一つの積み重ねが最終的なクオリティ差として現われます。