セルフマスタリングをする音楽クリエイターにはおなじみのiZotope Ozoneプラグイン。2018年フルアップデートしたOzone8(2024現在11が最新)はNutoronでもおなじみのAIによる自動マスタリング機能が加わり、マスタリングが苦手だった方も手軽にハイレベルなマスター制作を可能にしました。これから本格的なマスタリングを始めようとしている音楽クリエイターのために3つのポイントを紹介します。(基礎知識が欲しい方はこちらのOzone7の記事へ)
1.ミックスの良し悪しを判断できる Tonal Balance control
プロのマスタリングエンジニアでもミックスダウンのマスター状態が悪かった場合、それを補正して上質に仕上げるのは困難です。予算や納期の関係でどうしてもリリースしなければならない場合を除いて、優秀なエンジニアほどミックスに立ち戻ってのやり直しを提案することでしょう。
これまでアマチュアクリエイターがミックスの良し悪しを判断するのは、あくまでも自らの感覚でした。しかしOzone8で追加された「Tonal Balance control」はそのミックスバランスを判断できるメータータイプのプラグイン。
具体的な手順をsleepfreaksさんで解説しています
Ozone8(以降)でマスタリング(自動を含む)する際、「Tonal Balance controlの推奨範囲」に収めてくれれば、高品質のマスタリングを担保するというガイドライン的な役目を果たします。
使い方は簡単。MIX(トラックダウン)するときのマスタートラックの最後にこのプラグインを立ち上げるだけ。
OzoneやNeutronとそのまま連動も可能ですが、個人的には帯域を判断して、各トラックのミックスバランスを調整していくのがベターだと思います。もちろん仕上がり想定の異なるプリセットや参考楽曲を意図した設定変更も可能です。
2.リファレンス(質感を近づけたい有名アーティストの実音源)を参考に自動マスタリングできるMaster Assistant
CDや配信向けに、解析ボタンひとつで簡単に自動マスタリング設定が提案されるのですが、やはり具体的な参考楽曲を解析して、自らの楽曲をマッチングさせ類似マスタリングができるリファレンスを用いての自動マスタリングは今回のアップデートで最大のポイント。他ブログ等でもこの機能がメインに取り上げられているようです。発売時のiZotopeセミナーでサイデラマスタリング(当時)の森﨑氏がデモをしてくれましたが、著名エンジニアが試聴してもそこそこ合格点のマスタリング設定が簡単に自動設定されます。
もちろん、それを下敷きに細かな微調整すれば、さらに上を行くマスタリングが可能です。楽曲に対する解釈の違いややはりフラットなモニター環境、細かな聞き分けができる経験値が必要です。より仕上げのイメージに近づけるためのトライ&エラーを繰り返すことでプロに近しい技を模倣できるといえるでしょう。
上の動画と同じですが説明時間を合わせています
3.業務レベルのマスタリングに必要なプラグインが一通り揃ってます
Ozoneにコンポーネントされている定番プラグインはマキシマイザー以外のモジュールもトップクリエイターから高い評価を得ています。イコライザーやリミッター、エキサイターやステレオイメージャーはいずれも変な癖がなく微調整が必要なマスタリングには最適です。それぞれがM/S処理に対応していますし、各プラグインのプリセットもアイディアの引き出しになります。個人的にもVintage complessor や Limmiterは手放せません。
Ver10以降は音の立ち上がり具合を緻密にコントロールするトランジェント系のモジュールやノイズ軽減系のモジュールも追加され、ほとんど完成の域に達しています。
現存するアーティストの音源をマスタリングのリファレンスする場合のイコライザーカーブをWeb上で簡単にキャプチャできるAudiolensなど、その気になればいくらでも音像を追い込める選択肢があります。
CubaseやLogicproにも昨今、おおよそのマスタリングに充分活用できるプラグインも搭載されていますが、出音を極めたいクリエイターならやはりマスタリング専用プラグインには投資すべきです。
BigbangからMAN WITH A MISSION、坂本龍一まで手掛ける、ARTISANS MASTERINGの森﨑雅人さんは古いアウトボードのマスタリングを捨て、今ではOzoneとT-racksなど、厳選されたプラグインのみでトップレベルのITBマスタリングを行っています。
まとめ
そもそも、ミックスとかマスタリングとかは面倒だという方は専門家に任せるのが一番です。特にマスタリングはとても細かなディティールを追求するもの。しっかりしたモニター環境がないと緻密な音の追い込みはそもそも困難。しかし、楽曲の隅々まで出音にこだわるクリエイターやミュージシャンにとって、セルフマスタリングはエキサイティングな体験。ぜひチャレンジしてみましょう。マスタリング技術はノウハウ公開が薄い分野だから、Ozoneのプリセット(世界的マスタリングエンジニアのプリセットもある)や自動設定からテクニックを学ぶのが最短ルートといえます。有名曲のマスターデータと「これほどまで出音に差が出るのか?」という謎が解けるはずです。
当方もプロアマ問わずマスタリング依頼を受け付けております。オンラインの自動マスタリングのクオリティで我慢できないクリエイターさんやそもそもミックスや録音クオリティに自信がないミュージシャンやボーカリストをお手伝いしています。お気軽にお問合せください