2024年5月24日~26日にかけて、東京を中心に関東で活躍する映像クリエイター達が集い、どのチームが48時間で最も優れたショートフィルムを作るのかを競い合うという企画に参加しました。
The 48 Hour Film Projectとは
48 Hour Film Projectとは、脚本、撮影、そして編集と、すべての映画製作の過程を48時間以内で行い、1本の短編映画を完成させるという、他に類を見ない過酷で刺激的な映画製作コンペティションです。48 Hour Film Projectは2001年以来、世界各地の都市で開催され、2019年度は五大陸120都市で開催、7万人近い参加者によって5千もの映画が作られました。2020年には世界約120以上の都市で開催され、日本では大阪が8回目、東京は4回目開催となります。各都市のコンペティションでは、最優秀作品“Best of City Film”が選ばれ、その都市の代表として世界各都市の代表と競います。そして、その中から選出された10作品は、カンヌ映画祭短編映画部門で上映されます。
参加作品「リトルミッション」(予告編)
岩本崇穂監督からお誘いいただき、チームNINPOの一員として、私は編集最終段階のMA作業を担当。動画編集ピクチャーロックを終えたaafデータをいただいたのは、最終日の午前9時頃。完成品として提出期限まで8時間前。初めて見る作品の素材確認をして、整音とミックスを行いました。
私が整音している裏では作曲家mivjm氏も劇盤を作曲&レコーディング。尺は約7分と短いものの、初見の素材をその日の夕方までに映画作品を納品するミッションは経験がなく、とててもエキサイティングでした。
整音エンジニアとしての迷い?
いつも映画関係のMA・整音を行うときは、生々しい臨場感とエンドユーザーが違和感を感じない整ったバランスで迷いがち。iZotope RXを駆使しての細かな作業テクニックが必要なのはもちろん、「どの音を生かし」「どの音を消しこむor誤魔化す」というディレクションが一番重要だったりします。
特にラベリアマイク(演者の口元に装着される台詞を拾うためのミニマイク)とガンマイク(カメラ視点で現場のの音を拾うマイク)の収録状態により、どのマイクを優先して処理するかを迷い始めるといつまで経っても着地できません。処理結果を信じ、バンバン処理を進めてしまう思い切りの良さが大切です。
とは、いえ長尺映画だとカットごとの前後差や全体の流れを汲んだ判断が必要になるため、初回(1週目)処理は自分が行うべき処理を少しだけ甘めにバッファをとって行うことが大半です。それを監督のフィードバックなども考慮し、何度も煮詰めていくの通常のスタイル。
練る時間なしの一発勝負
48 Hour Film Projectでのスケジュール下ではもちろん、そんな余裕はなく、ほとんど一発勝負の処理を行う難しさがあり、とてもスリリングでした。追い込まれた状況下でいい意味でも悪い意味でも自力が露呈します。これは同じ企画に参加している監督や音楽家、映像カメラマンも全員が同じ状態と、言えるでしょう。
午前中に一通りの整音処理を終え、午後は上がってきた楽曲も含めて全体的なミックスバランス調整。監督さんに初回マスターを共有したのは15時頃。カット切り替えのボリュームバランスやBGMとのバランスなどの修正要望があり、これらをひとまとめに処理して、ステレオマスターを再提出。締め切り1時間前でした。こちらを監督さんが最終動画マスターに書き出して無事出品となりました。
プレミア上映会開催もめちゃくちゃ早い
応募全作品が上映されるという、プレミア上映会にも足を運びました。こちらも提出期限からわずか2週間後の6月9日。中野にある「中野ZERO 西館 小ホール」にて4部にわたって開催。
参加した「リトルミッション」はDグループに属し、17時から参加12本の作品が上映されました。客席には3票の投票権が与えられ好みの映画を選ぶというもの。中には4グループ全作品を観覧したインディーズ映画好きもおられたようです。
キャラクター / 早乙女龍彦(男性) 早乙女貴子(女性)
職業/属性 / 完璧主義者
小道具 / 置き手紙
台詞 / 「他人がどう思おうと関係ないよ。」
上記は共通の仕様下で制作、くじ引きでジャンル設定があったそうです。
ダークコメディ・フィルムノワール・リベンジ・バディフィルム・フォリムデファム・コメディ・成長物語・勝手が違う(居心地の悪い、場違いな)・ロードムービー・ソーシャルメディア
こちらが各映画に定められたジャンルでした。
7分尺の映画は凝縮されたインパクト勝負の側面もあり、優秀作品として同時上映された海外作品はかなりインパクトの高いものでした。もちろん、上映された作品はどれも個性があってとても楽しいものでした。これは参加してなくても一見の価値があります。すごいクリエイターばかりでした。
上映会参加の最大目的は出音のチェック
上映会に伺ったのは、もちろん参加者としてイベントを楽しむ目的がありましたが、最大の目的はやはり公開時の音質チェックです。いくらフラットに追い込んだモニターで音を作っても最終的なアウトプットは会場のスピーカー。これが視聴者に届く最終アプトプット。
どんなスピーカーでも平均的に意図した音が出ているか、これは体験でしか学べません。映画館だけでなく、こういった小ホールなどでもチェックする価値は充分にあります。もちろん、他の作品と比べての比較ができることも貴重です。
今回はラウドネス基準なども設けられ、レギュレーション内で仕上げましたが、他の作品より台詞量や音楽の仕様頻度がかなり少なかったため、若干おとなしく感じてしまったことが反省点です。もちろん、複数の作品に挟まれてのオムニバス上映という側面もありますが、少し環境音、音楽のバランスも改善の余地があったように思いました。また、ホールということで会場のエコーが思ったより強かった。これはダイアログをしっかり出さないと響きに埋もれる感じは出てしまうかもしれませんが、この点は問題ありませんでした。
おおよそ意図した音質にはなっていましたが、相手がいる場合の対処の仕方というのも少し要素に入れるべきと思いました。
参加することで貴重な経験ができ、また作品を良くするためのヒントを得ました。
私が運営する音声編集サービス「ハイブリッド・サウンドリフォーム」では各種映画祭で賞を狙っているインディーズムービーの整音・MAもお手伝いしています。劇場公開用の5.1chサラウンドミックスも対応、お気軽にお問合せください。
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