音楽とは、単なるメロディーやリズムを超えた、深い感情や人生の物語を伝える手段。しかし、その音楽が私たちの耳に届くまでには、多くのプロセスと専門家の手が加わっています。中でも「マスタリング」という工程は、音楽が完成形になる最終段階として非常に重要です。想像してみてください。素晴らしいアーティストが情熱的に楽曲を創り上げたとしても、その楽曲が最終的な研ぎ澄まされた形で私たちの耳に届くためには、マスタリングエンジニアの役割が欠かせません。
では、マスタリングエンジニアとは何者なのでしょうか。彼らは、楽曲の質感やダイナミクスを調整し、聴き手の心を最も深く打つように音楽を磨き上げる魔法使いのような存在です。彼らの手にかかれば、ある楽曲はさらに引き込まれる力を持ち、別の楽曲はより豊かな響きを持つこととなります。
本記事では、そんな音楽の背後に潜むヒーロー、マスタリングエンジニアの中でも特に有名で影響力のある10人を取り上げます。
彼らが手掛けた作品には、多くの人々が心を奪われた名曲が数多く含まれています。Bernie Grundmanが手掛けたマイケル・ジャクソンの「Thriller」、Bob Ludwigが手がけたNirvanaの「Nevermind」、その他多くの名作を生み出してきた彼らの技術と情熱に、改めて感謝の気持ちを持ちながら、彼らの素晴らしい業績と共に音楽の奥深さを探求してみましょう。
ガチですごいマスタリングエンジニア10人
1. Bob Ludwig
代表作: Led Zeppelin - "Physical Graffiti", Nirvana - "Nevermind"
Bob Ludwigは、音楽業界の巨星として知られる存在で、50年以上のキャリアを持つ伝説的なマスタリングエンジニアです。彼はLed Zeppelinの"Physical Graffiti"やNirvanaの"Nevermind"などの歴史的なアルバムを手掛けました。Ludwigの手がける作品は、その豊かさと音楽的な深みで知られています。彼は業界のトレンドを先取りするセンスを持ち、常に新しい技術や手法を取り入れています。
2. Bernie Grundman
代表作: Michael Jackson - "Thriller", Prince - "Purple Rain"
マイケル・ジャクソンの"Thriller"やプリンスの"Purple Rain"を手掛けたBernie Grundmanは、80年代のポップミュージックを代表するマスタリングエンジニアの一人です。彼の技術力とセンスは、アーティストだけでなくファンからも絶大な支持を受けています。Grundmanは自らのスタジオも持ち、新進のエンジニアの育成にも力を入れています。
3. Brian "Big Bass" Gardner
代表作: Eminem - "The Marshall Mathers LP", OutKast - "Stankonia"
Eminemの"The Marshall Mathers LP"やOutKastの"Stankonia"でその名を知られるようになったBrian Gardnerは、特にベースサウンドを際立たせる技術で知られています。そのニックネーム"Big Bass"には、彼のサウンドに対する情熱と技術が込められています。ヒップホップやR&Bの分野では特にその名が知られています。
4. Chris Athens
代表作: Drake - "Take Care", PVRIS - "White Noise"
Chris Athensは、現代のポップとヒップホップシーンでの彼のマスタリングが高く評価されています。Drakeの"Take Care"やPVRISの"White Noise"など、彼の手がける作品はクリアで現代的なサウンドが特徴です。アテネスは常に新しい技術を追求しており、そのアプローチは多くのアーティストから支持されています。
5. Stuart Hawkes
代表作: Amy Winehouse - "Back to Black", Ed Sheeran - "Divide"
Amy Winehouseの"Back to Black"やEd Sheeranの"Divide"を手掛けたStuart Hawkesは、そのサウンドに深さと暖かみを持たせる技術で知られています。ロンドンを拠点に活動し、多くのミュージシャンから絶大な信頼を寄せられています。特にボーカルの処理には定評があります。
6. Greg Calbi
代表作: Paul Simon - "Graceland", Tame Impala - "Currents"
Paul Simonの"Graceland"やTame Impalaの"Currents"を手掛けたGreg Calbiは、70年代から活動しているベテランエンジニア。彼のマスタリングは、音楽のジャンルや時代を超えて愛され続けています。ニューヨークのSterling Soundでの彼の仕事は、多くのエンジニアに影響を与えています。筆者である私はiZotopeとの提携もあることから、彼が手掛ける日本国内のセミナーにも参加したことがあり、しつこい質問にも嫌な顔せず丁寧に返答してくれる素敵な人間性と確かな技術の引き出しを感じることができ、個人的にも好感を持っています。
7. Mandy Parnell
代表作: Björk - "Biophilia", The XX - "xx"
Björkの"Biophilia"やThe XXの"xx"など、エレクトロニカやエクスペリメンタルなサウンドのマスタリングで知られるMandy Parnellは、独自のセンスを持ったエンジニアです。彼女の手がける作品は、緻密で繊細なサウンドが特徴です。
8. Emily Lazar
代表作: Sia - "1000 Forms of Fear", Coldplay - "A Head Full of Dreams"
Siaの"1000 Forms of Fear"やColdplayの"A Head Full of Dreams"を手掛けたEmily Lazarは、現代のトップアーティストたちの作品を数多く手がけてきました。彼女は、クリアで洗練されたサウンドを持つ作品を生み出すことで知られています。
9. Kevin Gray
代表作: The Doors - "L.A. Woman", Neil Young - "Harvest"
The Doorsの"L.A. Woman"やNeil Youngの"Harvest"を手掛けたKevin Grayは、クラシックロックの名盤を数多く手がけてきました。彼のマスタリングは、オリジナルの音を忠実に再現することで多くのファンから愛されています。
10.Tom Coyne (1954-2017)
代表作: Adele - "25" , Taylor Swift - "1989" , Sam Smith- "In The Lonely Hour"
2017年に惜しくも他界されましたが、Tom Coyneは、近代音楽産業の中で最も著名なマスタリングエンジニアの一人。彼の手がけた作品は数えきれないほどあり、その中には数々のグラミー賞を受賞したトラックも含まれています。特に、Adeleの「25」やTaylor Swiftの「1989」、Sam Smithの「In The Lonely Hour」などの大ヒットアルバムで彼の技術は際立っていました。卓越した耳と技術を持つことで知られ、アーティストやプロデューサーから絶大な信頼を寄せられていました。
私の師匠(何度もセミナーを受け勝手にそう思っている)である森﨑雅人@ARTISANS MASTERINGさんのフェイバリットエンジニアであり、彼の技術に憧れてマスタリングエンジニアになったとのこと。その影響から私もTom Coyneの楽曲をリファレンスにしています。
いかがだったでしょうか?世界中でTOPに入るマスタリングエンジニアを紹介させていただきました。もちろん彼らが手がけた楽曲を聴くのが最もスリリング。「こんな音にしたい」と、プロエンジニアもうらなせるTOP OF TOPのレジェンドたちです。
インタビューの動画を中心に貼らせていただきましたが、彼らの発言や考え方を知るだけでも音楽制作やマスタリングについてグッと捉え方が深まると思います。
私も音声修復にとどまらず、まだまだ音楽制作のミックスやマスタリングに関わりたいと改めて思いました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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