先日、今から30年ほど前に制作された自主製作映画の音質改善を承りました。
クライアントさんが高校時代にVHSデッキを編集されたという作品。VHS時代の音声はアナログ。現存する多くの録画済みビデオテープ同様、ヒスノイズなどが多く混入しています。
特別な作品は多くの場合、既にデジタルコンバートされており、クライアント様はブルーレイメディアにコピーされていたデータをお持ちでした。もちろん元データの状態はそのままに
発生したノイズもろともデジタル化されています。
ヒスノイズのほかアナログ音声時代にはありがちともいえる、レコーダーを止めた時の「ブツっ」といった音。
家庭用VTR機材を駆使してのVHS編集は、つなぎ目などの仕上げコントロールは難しく、
多くの場合、違和感のある部分が含まれてしまうのが常です。
私が主な生業とする今どきのオーディオレストレーション(音声修復)技術において、それらのネガティブな音声の多くが改善できるようになりました。
とはいえ、一聴して明らかにノイズと感じる状態の音源は、毎年アップデートする自動処理での軽減作業は多くの場合上手く行きません。
違和感がある音を丹念に調べ、一つ一つ局所的に編集していくため、30分を超える長尺なものだと、かなりコスト高なお見積りをせざるを得ません。
<平均的なヒスノイズ除去、局所的な改善リクエスト>
初回の改善サンプル提示では、30秒程度ですがほぼマックスのクオリティでご提案。
常に入っているヒスノイズと、セリフを重ねるごとに強くなるノイズを丹念に軽減。
もちろん、違和感のあるつなぎ目の「ブツっ」というノイズなども除去。
クオリティには驚いていただきましたが、修復箇所の多さからお見積り高騰し、
クライアントの予算に合わず、折衷案として下記の方法でオーダーいただきました。
1.トータルのヒスノイズ除去
2.1で出来上がった全体の音声から、ピンポイントでどうしても改善したい箇所をリクエスト
上記の形で音質改善作業を進めました。
<追加オーダーはBGMが後ろに乗っかったセリフの抜き出し>
2で行う追加オーダーは当初、「ブツっ」という音などを消すという予想をしていましたが、
実際にクライアントさんからあったのは「バックにBGMが差し込まれたシーンのセリフのみの抜き出し」でした。
セリフ自体は1カットのシーンに5~10フレーズでしたが、けっこうくっきりとBGMが乗っかているため、当然セリフにかぶってきます。
これまでにないパターンのリクエストに、どのくらい軽減できるか未知数でしたが、
まずまずの仕上がりで納品。喜んで頂けました。